クランプスとペルヒテン

悪魔的な姿:クランプス

クランプスやペルヒテンの行進は、オーストリアで長い伝統があります。しかし、クランプスとペルヒテンは、決して同一視することはできません。

クランプスは、アルプス地方全体の伝統で、12月6日に聖ニコラウスのお供をする悪魔のような存在です。贈り物を配る聖ニコラウスに対し、クランプスは鎖とムチを持ってその年に良い子でなかった子供達の前に現れます。「クランプス」という名前は、悪魔の姿によくあるような「鉤爪」に由来するようです。イタリア語の「グランパ」は、「魔手」という意味です。クランプスの伝統は、ハプスブルク時代からあり、周辺地域にも存在しました。

ペルヒト、美しいペルヒテンと醜いペルヒテン

クランプスに対しペルヒテンは、バイエルンとオーストリアのアルプス地方のみにある伝統です。様々な文献によると恐らく名前は、伝説の人物「ペルヒタ(又はベルヒタ)」に由来するようです。ペルヒテンはよく見ると、2種類の異なるペルヒテンに分類できます。良い「美しいペルヒテン」と、マスクが「ラルヴェン」とも呼ばれ、特に恐怖を与えるように作られた悪い「醜いペルヒテン」です。ペルヒテンの芸術的に彫刻が施されたマスクは、全て手作業により作られています。どちらのペルヒテンも、一つ又は複数の鈴を持ち冬を追い払います。

しきたりによると、12月25日から1月6日までの十二夜に、初めてペルヒテンは現れます。しかし現在では、12月初頭からペルヒテンの行進が行われています。

ガスタインのペルヒテンには、1837年に当時の皇帝フェルディナンド一世も訪れています。2011年からガスタインのペルヒテンは、ユネスコの無形文化財のリストに登録されています。

20世紀の民族芸術の波は、クランプスとペルヒテンの分類を徐々に不明瞭にしました。

そして「クランプスペルヒテン」が発展し、様々なグループが生まれ、「パス」とも呼ばれるようになりました。ザルツブルクだけで、約200の異なる「パス」があります。

生き続ける伝統行事

ペルヒテンの行進では常に、たくさんのペルヒテンの中に「本物のペルヒト（亡霊）」が一匹混じっている、と俗に言われています。

荒々しい一味を安全な距離から観察し、芸術的なマスクにたくさんの光が当たると、二度見しなければなりません。今、尖った耳が動かなかった？それともただの風だった？全ての伝説には、必ず僅かな真実が混ざっているのではなかった？

しかし、ペルヒテンやクランプス、クランプスペルヒテン、魔女は、そうこうしているうちに通り過ぎてしまいます。だからこそ、パスたちが私たちの心に大きな恐怖を与えることになったとしても、来年も再び通りに立って見てしまうことでしょう。

ひょっとすると、その時に私たちは見つけることができるかもしれません：常に混じっている唯一「本物のペルヒト」を。